TMRセンサーがすごい!?「Cherry Xtrfy K5 PRO TMR」

こんにちは!c1trusです。

今回は2010年代のゲーマーならおなじみだった「Cherry Xtrfy」ブランドの磁気キーボード、
「K5 PRO TMR」をレビューしていきます。
現在主流のホールエフェクトセンサーを利用した磁気キーボードとは異なり、
TMRセンサーを用いた検出を行う本機は一体どのような製品なのか、詳しく見ていきましょう!
※レビューにあたり、Ameter様からご提供いただきました。
※Ameterは日本向けのCherry代理店契約をCherryと締結したようです。
従来のホールエフェクト(HE)との違いは?

みなさんが1番気になるのはここだと思います。
検出方式が違うことによって何がどう変わってくるのでしょうか?
難しい話を含むため興味のある方以外は、
- センサー検出方式の違いによって精度と遅延が上昇する
という点を抑えていただければ問題はありません。
ホールエフェクト式とは
電流が流れる半導体に磁場を垂直にかけると電圧(ホール電圧)が発生する現象を利用しています。

理系の人は電磁気学で電磁誘導やりましたよね?あれです!
キーの磁石が近づくことで磁場が強くなり、電圧が変化するのを検出します。これを利用してキーの動きを検出してラピッドトリガーに利用しているというわけです。
ただ比較的高感度ではあるのですが、感度と分解能に限界があるという弱点が存在します。
TMR方式とは
TMRセンサーは、磁気トンネル接合を利用します。
外部の磁場の変化によって2つの強磁性体の層の磁化方向が変わり電子が絶縁体を通り抜ける、所謂トンネル効果で抵抗値が劇的に変化します。
この抵抗値の変化が非常に大きいため、磁場の微細な変化を極めて高い感度で捉える可能となり、より高精度で低遅延が実現可能です。
また軸ブレによる水平方向への本来検出したくないノイズも、ホールエフェクトよりも高精度に捉えることができるため、フィルタリングすることで軸ブレに対してソフトウェア的に強くなります。

物理的に軸ブレをタイトにすることでホールエフェクトは対処していましたが、TMRであれば更にそれを強固なものとすることもできます。
まとめると?
TMRセンサーはホールエフェクトに対して以下の優位点があります。
- さらに高精度で低遅延
- 低消費電力
- 軸ブレに強い

低消費電力化できるということは、ワイヤレス化が進む可能性が少し見えてきたなとも捉えられますね!
次項からはそんなTMRを利用したK5 Proのハードとソフト面を見ていきましょう。
ハードウェア
ケース

ABS製のプラスチックケースで、
オレンジのアクセントと半透明なデザインがとてもかわいいです。
リとかはないんですが、ちょっとおもちゃ感というか安っぽい感じは否めないです。
高級感はないです。

それがかわいいとも言える。
安っぽいは悪いわけじゃないですね!

裏面にはチルトがあり、2段階で変更できます。
内部構造

ボールキャッチ…ではないですが、
それぐらい簡単に同じ要領でトップケースを開くことが可能です。

ツメは割らないように注意!
トレイマウント採用で、ボトムケースのスタンドオフに基盤がネジ止めされる形です。
ボトムフォームは薄めのフォームが1枚とPETプレートが敷いてあります。

チルトの収納箇所が内部に盛り上がっているのですが、ここにフォームが無いことで
基盤と干渉してしまい打鍵感と打鍵音が明らかに硬くフィーリングが悪くなってしまっています。
またスタンドオフやツメがある箇所もちょっと硬く周りと違うフィーリングに鳴っているのは残念です。

プレートとPCBの間はPoronの吸音材が挟まれています。
IPXEとかPETとかは特にないですね。

スタビライザーはプレートマウントを採用。
ルブはされていて、スタビライザー由来のノイズはほぼないです。

キーキャップ

ABSのシャインスルーキーキャップを採用。
文字のとこからライティングが透過します。
厚さは実測1.3mmで標準から少し薄めぐらい。
一部バリなどがあるのは少し気になりますが許容範囲。
質感はサラサラ気味。
タイピングやゲームプレイに影響があることはないでしょう。
キースイッチ
Cherry Crystal磁気スイッチを採用。
素材構成等詳しい情報は分かりませんでしたが、スペックは以下の通り。
| Switch Type | Linear |
| Initial Force | 30gf |
| Total Travel | 3.5mm |
| Rapid Trigger | 0.01mm |
トラベルの実測値は3.4mm。

ステムは11mm、スプリングは14.2mmです。
ボトムアウトの重さは分かりませんでしたが、スプリングに対してステムのポールが短いので
荷重変化は途中から少し加速気味。底打ちは柔らかいです。
ステムには適度にルブがしてあり、スムーズです。




軸ブレは近年の磁気スイッチににしては大きく、
Gateron Jadeぐらいはあるかなと思います。
音は中域、音量はそこまで大きくないです。
Lekkerみたいなイメージ。

軸ブレは大きい方なので、これで0.01mmが実現可能なのか気になるところですね!TMRセンサー採用はどう影響するのか…
打鍵音・打鍵感
上で述べたように、ボトムケースとの接触部は音が硬く大きくなっています。
全体的には少し薄めのABSということもあって、スイッチのトップアウト音が目立っているように感じますね。スイッチのルブか、変更によって改善はされると思います。
ケースのプラスチックな共鳴も抑えきれてはいませんね。

打鍵感と打鍵音はこのクラスのキーボードでは良いとは言えないかなと思います。もう少し頑張ってほしいところ。
ラピトリの精度、遅延について

精度計測に用いているNeon TesterはHE/MX用であり、TMRでの信用性が未知数のため今回は計測せず使用感ベースでのレビューとなります。
軸ブレが大きめのスイッチでJadeよりちょいマシぐらいだと思うのですが、
0.01mmRT設定、デッドゾーン0で動作は安定してプレイ可能でした。
体感でも0.01mmに近い感じはするのですが、
RAKKAやTofixと比べるとキレがない、もたつく感覚が少しあるので、
内部遅延がRAKKA/Tofixに比べると大きいのではないかなと感じます。

Jadeより少しブレがないレベルの軸ブレに対しての検出精度の高さという面では、TMRの効果がでているように感じますね。Jadeだと0.1mm以下は若干不安定かも。
ソフトウェア
Webドライバーに対応しております。

Webドライバーへの導線がほぼなく、かなり見つけづらいので、ここから飛んだほうが良いと思います。
余談ですがcheery.cnということは、Cherryのスイッチ生産やゲーミング事業の売却検討による変化…とうことでしょうか?

キーリマップ
カスタムキーでキーリマップが可能です。
基本的なキーやマルチメディアキーは存在します。
残念ながらIME ON/OFF、プロファイル切り替えはなし。

Fnレイヤーは一つ。
システムキーで赤くなっているところは、変更不可です。

プロファイル
プロファイルは4つまでオンボード保存可能。

説明書なども確認しましたが、システムキーにもプロファイルスイッチは存在しない模様。変更の際はwebドライバー経由となりそうです。

キーキャリブレーションとスイッチ選択
キーボード設定から使用するスイッチを選択し、必ずキーキャリブレーションを行いましょう。


ラピッドトリガー設定
キーボード設定のスイッチ設定から可能です。

キートリガーストローク
ここがアクチュエーションポイントとなります。
ここを超えると入力され、RTが起動します。
最短0.1mm、0.01mm単位で変更が可能です。
RT
RT=連続ラピッドトリガーとなります。
一度起動すると、完全に離すまではラピッドトリガーがオンとなります。
リセットとトリガーを分けて設定可能で、
最短0.01mm、0,01mm単位で変更が可能です。
デッドゾーン

誤動作防止のため反応しない区間の設定です。0mmも可能。
K5はボトムデッドゾーンのみ設定可能です。
RT Stab/誤タップ防止
RT Stabや誤タップ防止モードは基本的に遅延が増加する代わりに、安定性が向上すると考えていただいて問題ありません。お好みで使用しましょう。


Mod-Tap/SOCD/DKS/Toggle
キーボードの詳細設定から可能です。
DKS
深度に応じて最大4つの動作を単一キーに割り振ることが可能です。

Mod-Tap
単押しと長押しでキーの機能を切り替えることができます。

Toggle
一度押せば押している状態が維持され、再度入力されると切れる機能です。

Snap key
Snappy TappyやSuper Tapなどと原理は同じですが、K5は最後入力優先のみとなっているので注意。

さいごに

今回はCherry Xtrfy K5 Pro TMRをレビューしました。

ハードウェアの完成度や、ソフトウェアの完成度には改善点すべき点が見られますが、
TMRセンサーでの検出技術は目を見張るべきものがあると感じます。
TMR方式での今後の磁気キーボード、ゲーミングキーボードの進化を期待させてくれる結果なので、今後に期待したいところです。

