遂にリリースされた国産の競技FPS向けイヤホンの実力は!?「HID-Labs DETECT」使用レビュー

今回は話題のFPS向けイヤホン、HID-Labs DETECTをレビューしてきます!

発売前の発表当初から話題になっていた、
競技FPS向けに開発されたという国産イヤホン「DETECT」。
どういった思想で設計され、どういった使用感なのかを詳細に見ていきましょう。
※レビューにあたり、HID-Labs様からサンプル品をご提供いただきました。
主な仕様
メリット/デメリット
FPSに必要なサウンドチューニングとは?
まず正直FPS用チューニングって何やねん、
何を目指すのが最適やねんと思ってる方が大半でしょう。

作編曲やMixなど音楽制作に携わり、
競技FPSもプレイする私なりの観点で必要な音を考えてみます。
必要な音
足音、銃声、リロード音、スキルの音…
大体これぐらいが戦況を分析するのに必要な音です。
ここで重要なのは、
「これが足音である」「これが銃声である」という情報が認識できるかであって
「いい音でリッチな足音や銃声」ではないということです。

つまるところ、
「映画のように鬼気迫る、迫力のある、リアルな音」
である必要はないということです。
リッチな音というのは
専門的言えば倍音豊かで、ふくよかな音であると言えます。
雑に言うなら、
「色んな周波数の音が出て、それを表現しきれている」、
裏を返すと、
「音の情報が多すぎる」ということです。
色んな音が出すぎていたり、リバーブなどのエフェクトがかかっていて
「音の情報を掴むために必要でない」ものが多いというわけです。

要は、いい音ってのはお化粧、オシャレしすぎってことです!
FPS向けサウンドチューニングの目指すところ
必要な音以外は切ってしまって問題ない

本当は必要な周波数以外をすべて切ってしまうと、当然必要なものの聞こえ方が変わりますが、認識としてはこれでいいです。正直そんなに解像度もいりません。
正確に音が判断でき、音の遅延がないこと

ここで言う遅延は、有線や無線などの話ではありません。
じゃあ何なのか?
それは「トランジェント」です。
「音が立ち上がる速度、減速する速度」ここが非常に大事です。
雑に言えば、
最大音量が出るまでの時間を短く、減速も短く
みたいなイメージに近いです。
そうすれば耳に届くのが早く、他の音と混濁してしまうこともありません。
上下左右前後、距離の認識ができること
これはHRTF(頭部伝達関数)に関わってきます。
ここでインパルス応答が…という話をしても仕方ないので、

どうしてもLとRのステレオで聞いている以上、
3D的な空間把握をするためには工夫が必要になってくる
と理解してください。
人間の耳の特性をデジタル的に再現する処理が必要わけですね。
ただこれはゲーム内で処理されていることが多いですが、
イヤホンにてこれを正確に伝えることが重要です。
それ以外にも、
- 両耳間レベル差(左右の耳に届く音の差)
- 両耳間時間差(左右の耳に届く時間の差)
これらによって聞こえる周波数の定位する位置にズレがでてきます。
こういったことを考慮していく必要があります。
FPS向けサウンドをまとめると…
必要な音だけを、遅延と混濁なく聞き取れるようにすること。
これにつきます。
DETECT

サウンドについて
まずはじめに、

AIMTuneモジュールは使用必須です!
AIMTuneモジュールがあることで真のFPS向けと言えます。
ですので、ここから先の評価はすべてAIMTuneありきです。
音のトランジェント特性
音の立ち上がりがとんでもなく速いです。そしてリリース、収束も速いです。
余韻や残響は削られ、他の音との混濁が抑えられていますので、
速いアタック感付近だけが残り、瞬間的に音を捉えることができます。

特に低域のリバーブ感やリリースは他の音に被りやすく、音を判別するのに不要な情報なのでこういったチューニング、特性は非常に良いと思います。
周波数特性

FPS向け!と思い切ったイコライジングです。
音を楽しむということを切り捨て、分析のためだけにチューニングされています。
何の音か判別するのに必要のないローからローミッドはあまり出ていません。
1000-5000Hzあたりを中心に大きく聞こえ、
音が刺さりやすい8000Hz付近中心に下がっているいるように感じます。
そのお陰で通常であればマスキングされていた帯域が聞こえやすく、
持ち前のトランジェントの早さからくる、
音のアタック感(足音のコツッって感じや銃声の破裂音など)が掴みやすいです。
アタック感の音の明瞭さ加減で距離なども掴みやすいですね。

故に他のゲームや、音楽を聞くことはAIMTuneモジュールを抜いたとしてもオススメしません。
ハードウェアについて
重量
本体もケーブル含め非常に軽く、装着していても重さをほぼ感じません。
長時間プレイすることも多いと思うので、
そういった点で疲れないのは非常に良いと思います。
装着感
ディープインサート形式で、
カナル型よりも更に耳の奥に押し込んで装着する仕様です。
ハウジングの概念がないような形ですが、
そういった仕様上ハウジングによる合う合わないがなく、
装着感は悪くないです。

良いか?と言われると微妙なところですが、不快感はないです。
ただカナル型が苦手な人はまず無理だと思います。
ケーブル

estron製の、柔軟で細く、超軽量なイヤホンケーブルを使用しています。
極細ワイヤーみたいなケーブルで、かなりしなやかであまり断線しそうな気配はありません。
気になるポイントとしては、
タッチノイズ(ケーブルがなにかに触れたときの雑音)が大きめ、ケーブルがわりと絡まったり取り回しが良くないです。
イヤーピース

Westone Audioというオーディオ界で知らない人はいないメーカーを採用。
ディープインサート形式で、3段キノコのような耳の奥の方に押し込んで使う性質上、
小さめのものがあらかじめ装着されています。

私は普段イヤーピースはMLやLを利用していますが、
特にサイズ的に問題はありません。
どうしても個人差が出てしまう部分なので、合わない場合は同じモノの別サイズがAmazonやeイヤで販売されているので購入しましょう。多分1ペアなら500円ぐらい。

できればサイズ別を付いている方が良かった…
あと、耳の奥に装着するのでどうしても汚れやすいです。
汚れが溜まると、理想の音が再現できなくなります。
専用の清掃ツールと、交換用のファイルターチップを別売するようなので、
できれば購入しておいたほうが良いでしょう。
AIMTuneモジュール

使用必須な、FPSをプレイする場合に最適な音に調整するモジュールです。
ホワイトノイズ耐性を上げるためにインピーダンスを引き上げたり、
ゲームのHTRF処理を上手くイヤホンに伝える調整を行っているようです。

少し音量が取りにくくなるため、注意が必要!
一般的なオーディオインタフェースなら特に問題はないです。
上でも散々述べていますが、
これのお陰で真のFPS用イヤホンと呼べるので、常時使用でいいと思います。
公式的には「音楽を聴く場合などでは、AIMTuneモジュールなし」が推奨されております。

私もそう感じますが、そもそもそういった設計思想のものじゃないので、大人しく別のイヤホンを使用したほうが良いです!
さいごに


今回はHID-LabsからリリースされたFPS向けイヤホン「DETECT」を詳細にレビューしました。
まず設計思想の割り切り、方向性が明確であり、
それがしっかりプロダクトに反映されているのが良いと思います。
そういった点から非常に企業努力を感じます。
製品としても、「FPS向け」という言葉を体現しており、
必要な音がどういう音なのかをしっかり理解されているなと思います。
故に個性が強い製品ですし、多少マイナスポイントもありましたが、
「そういう製品」なので割り切ることはできます。

むしろ割り切れないなら買わないほうが良いと思います。
ガチでランクや競技としてFPSに取り組まれたい方は、
持っておいて損のない製品となっていますので、ぜひ!

